【コラム】更年期世代の心をほどく、安曇野の森の灯り|蝋燭屋アジト

「このままでいいのだろうか」という感覚

40代から50代にかけて、多くの人が人生の揺らぎを経験する。

子育て。 仕事。 親の介護。 身体の変化。

人生を懸命に走ってきたからこそ、ふと立ち止まった瞬間に、 「私は、本当はどうしたかったのだろう」 という声が聞こえてくる。

心理学では「ミドルエイジクライシス(中年の危機)」とも呼ばれるが、それは決して“弱さ”ではない。

むしろ、長い間置き去りにしてきた“自分自身”が、ようやく語り始めたサインなのかもしれない。

火の揺らぎが、自律神経をゆるめていく

蝋燭の火を見つめていると、不思議と呼吸が深くなる。

それは、炎の揺らぎが人の神経に自然な安心感を与えるからだと言われている。

デジタルの光に囲まれた現代社会では、私たちの感覚は常に緊張している。

だからこそ、火の持つ“原始的な安心感”が、心と身体をゆっくりほどいていく。

蝋燭屋アジトの灯りには、単なる癒しを超えた、“感覚を回復する時間”が流れている。

香りが呼び戻す、「忘れていた自分」

クロモジ。 ヒノキ。 モミ。

日本産精油の香りは、どこか懐かしい。

それは、私たちの身体の奥に「森の記憶」が残っているからかもしれない。

香りは理屈を超えて、感情や記憶へ直接届く。

忙しさの中で忘れていた感覚。 押し込めていた悲しみ。 見ないふりをしてきた本音。

火と香りは、それらを静かに照らしてくれる。

結びに ― 「整える」ではなく、「ほどく」

現代は「整える」ことばかりが求められる。

しかし本当に必要なのは、張り詰めたものを“ほどく”ことなのかもしれない。

森の静けさ。 火の揺らぎ。 香りの記憶。

その小さな灯りは、人生の途中で立ち止まった私たちに、 「そのままでいい」 と、そっと語りかけてくれる。

作家紹介:安曇野の蝋燭作家「蝋燭屋アジト」佐藤敬子さん

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